新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備え、緊急事態宣言を可能とする新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案は、国民の私権制限を含むだけに与野党双方には懸念がくすぶる。政府は慎重な運用と丁寧な手続きを強調し、不安の払拭(ふっしょく)を図る。
改正案を担当する西村康稔経済再生担当相は10日の記者会見で、緊急事態宣言について「万が一に備えて準備するものだ。私としてはそういう事態にならないことを望んでいる。伝家の宝刀であり続けてほしい」と述べ、宣言に至らず、終息するよう全力を挙げる考えを強調した。
立憲民主党や国民民主党など野党は、宣言に当たって国会での事前承認や事前報告を求めている。公明党の山口那津男代表は首相官邸での政府与党連絡会議で「内外への影響が大きい。仮に宣言を発出する場合は与党とも十分協議し、国民への丁寧な説明をお願いしたい」と求めた。
西村氏は記者会見で、私権の制限について法案に「必要最小限」とあることを「大事な規定だ」と強調。対象区域と期間を限定するのもそのためだ。
要件には(1)感染症が国内で発生(2)国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある(3)全国的かつ急速に蔓延(まんえん)し、国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある-とあるが、恣意(しい)的な運用がありうるとの指摘もある。
こうした指摘に対し西村氏は「要件を定量的に示すのは難しい」と述べたものの、専門家らによる諮問委員会などでの意見を十分に聴き、「感染の状況を踏まえ、データを見て総合的に判断したい」と説明。政府高官は「感染者が爆発的に増えた場合などに限られるのではないか」と語った。
野党が求める国会関与の強化に関しては、法案の付帯決議や西村氏の国会での答弁によって担保する方向となりそうだ。(沢田大典)
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